今回、ご紹介するのはこちらこちら、ハーバード大学教授であるマイケル・サンデルが書いた「これからの正義の話をしよう」です。
その後に出版された「実力も運のうち」もすごく話題になりました。両方とも今の世界の経済的、文化的な側面から非常に興味深い内容になっています。
こういった自己啓発系の本で自伝的なものではなく、いわゆる「識者」が書いた本はあまり面白くなく、心に響かないパターンが多いのですがこちらは全くその対象外でした。
本書とは異なりますが、前述した「実力も運のうち」という一見運も実力のうちという言葉の間違いじゃないのかと思ってしまう題名の本の内容で、収入や生活環境の格差は努力の結果や実力社会の実力者だから得ているのか、それとも運が大きく影響していて実力はさほど関係ないのかという話からすごく考えさせられます。
一生懸命勉強してエリート大学を卒業して、エリート企業に入社してホワイトカラーの仕事として基本的には雨風の当たらない快適なところでパソコンとコミュニケーションだけで高収入を得ている人が全て自分の実力で勝ち取ったのか。
コロナ禍で感染や命のなくなる危険性もありながらブルーカラーの仕事をしている人たちは実力や努力が足りないからそういったそういった仕事をしているのか。
これは簡単に白黒はっきりできないけれど今後の社会の流れや動きが変化するポイントの一つになると思います。
以前の記事で取り上げた、橘玲さんの「言ってはいけない真実・残酷すぎる真実」シリーズでIQや知能の違いによって人種や文明や経済の栄える度合いが違うという内容がありましたが合わせて考えるとさらに興味深くなります。
世界情勢はいつでも変化しますが特にここ最近のコロナパンデミック、ウクライナ情勢、安倍元総理銃撃事件などは特に大きな影響や実情の浮き彫りという変化があったと思います。
大局的に見て人類は平和で自由で幸福に向かっていると思いますが理想は全ての人がそう感じることだと思います。
ただ、人類の歴史を見ると遺伝子に組み込まれているものの中に”争い””不公平”などが色々なエネルギー源だったり、テクノロジーを前に進めてきたのも事実なのでこのあたりが今後数百年、数千年でどうなるかは自分では見届けられなくても興味がめちゃあるところです。
話が逸れましたが、本題です。
この本は”幸福””自由””美徳”の三つをテーマに様々な価値観や常識に対して多様な角度から考え方などに一石を投じる物です。
この三つ(幸福、自由、美徳)というのは人により価値観が違うと思いますが
ドナルド・トランプ元アメリカ合衆国大統領が当選した現状はサイレントマジョリティーという言葉が頻繁に出てくるように、投票率も60%を超えるほど言いたいことが溜まっていたり、なんとかしたいという意思が現れてます。最近の参議院選挙での政党の数など見ていると価値観が本当に多様化したりしているので選挙制度自体が時代に合っていないのではないかと感じます。
最近、アメリカでの妊娠中絶を違憲とする最高裁での判決は象徴的な出来事でした。
見事に五分五分に意見が分かれている状態で全ての考えが正解で希望通り生きれば良いじゃないかと思うけど、社会を運営する上ではそういうわけにもいかずすごく難しい状況で選択を迫られます。
この本は普段の自分の生活には関係ないと思いながらも身近なところで長期的に見たら自分の意見を持って必要な時には伝えられることが重要かと思います。
色々な決断を迫られたり、何か問題が起きた時に物事を俯瞰的に見れるようになる非常に良い本でした。興味がある方はぜひ。
下記目次です。
目次
第1章
正しいことをする
幸福、自由、美徳
パープルハート勲章にふさわしい戦傷とは?
企業救済への怒り
正義への三つのアプローチ
暴走する路面電車
アフガニスタンのヤギ飼い
道徳のジレンマ
第2章
最大幸福原理ー功利主義
ジェレミー・ベンサムの功利主義
反論その1:個人の権利
反論その2:価値の共通通貨
ジョン・スチュアート・ミル
第3章
私は私のものか?ーリバタリアニズム(自由至上主義)
最小国家
自由市場の哲学
マイケル・ジョーダンの金
私は私のものか?
第4章
雇われ助っ人ー市場と倫理
どちらが正しいのかー徴兵と傭兵
志願兵制の擁護論
金をもらっての妊娠
代理出産契約と正義
妊娠を外部委託する
第5章
重要なのは動機ーイマヌエル・カント
権利に対するカントの見方
最大幸福の問題点
自由とは何か
人格と物
道徳的か否かを知りたければ動機を見よ
道徳の最高原理とは何か
定言命法対仮言命法
道徳と自由
カントへの疑問
セックスと嘘と政治
第6章
平等をめぐる議論ージョン・ロールズ
契約の道徳的限界
同意だけでは不十分な場合ーベースボールカードと水漏れするトイレ
同意が必須ではない場合ーヒュームの家とスクイジー・マン
利益か同意か?自動車修理工サムの場合
完璧な契約を想像する
正義の二つの原理
道徳的恣意性の議論
平等主義の悪夢
道徳的功績を否定する
人生は不公平か
第7章
アファマーティブ・アクションをめぐる論争
テストの差を補正する
過去の過ちを補償する
多様性を促進する
人種優越処置は権利を侵害するか
人種隔離と反ユダヤ的定員制限
白人のためのためのアファマーケティブ・アクション?
正義を道徳的功績から切り離すことは可能か
大学の入学許可を競売にかけては?
第8章
誰が何に値するか?ーアリストテレス
正義、目的因、名誉
目的論的思考:テニスコートとクマのプーさん
大学の目的は何か?
政治の目的は何か?
政治に参加しなくても善い人になれるか
習うより慣れよ
政治と善良な生活
ケイシー・マーティンのゴルフカート
第9章
たがいに負うものとは何か?ー忠誠のジレンマ
謝罪と補償
先祖の罪を償うべきか
道徳的個人主義
行政府は道徳的に中立であるべきか
正義と自由
コミュニティの要求
物語る存在
同意を超越した責務
連帯と帰属
連帯は同族を優遇する偏見か?
忠誠は普遍的道徳原理に勝るか?
正義と善良な生活
第10章
正義と共通善
中立への切望
妊娠中絶と幹細胞をめぐる論争
同性婚
正義と善良な生活
共通善に基づく政治